Monday 20 July 2020

通勤手当の不思議

コロナ禍で、満員電車大国日本でも、自宅勤務の導入が進みつつあるようです。

日本の会社も、とうとう重い腰を上げ始めたということでしょうか。

緊急事態宣言解除後も、都心の事務所の再開に慎重な会社も多いようで、できる限りは自宅勤務を継続、もしくは勤務日の何割かは自宅勤務を続けるといった、フレキシブルな勤務体系を導入する会社もあるようですね。

でも、そこで問題になっているのは、それまで支給されていた、通勤交通費手当の取り扱い。

たとえば、半年定期をもっていて、途中で自宅勤務に変更になった場合、定期を払い戻したお金は、会社に返還しないといけないか。

まあ、日本の個人所得税の観点からすると、この場合、会社に返金しなければなりませんね。

日本の税制では、通勤交通費は非課税ですが、もし、定期を払い戻した金額を会社に返金しなかった場合、その分は所得税の課税対象となります。

定期の払い戻し金は返金不要とした会社は、年末調整で調整したりできるのでしょうか?
日本の税金の事はよくわからん。

しかし英国では、このような、通勤手当の取り扱い問題は起こっていませんね。

と言いますのも、英国では、通勤交通費は基本的に自腹です。

英国の税制では、通勤交通費は個人所得税非課税にならないんです。

雇用契約にて定められた主な勤務地と自宅との往復にかかる旅費を支給した場合、それは個人所得税の課税対象となります。

なので通常、英国の会社は、通勤手当と言う名目で交通費を支給しません。

遠方に住んでるから交通費が高額だという問題は、個人の問題であって、会社には関係ないのです。

仕事を探す際、家が遠くて交通費が高額だからと、給与希望額を高めに設定するのは個人の自由ですが、求職者としては、その分競争力が下がる危険性もあります。

というか、家が遠いことを理由に、自分のスキルよりも高い給与額を希望したら、まず、採用されないでしょう。

それなら、家の近くで仕事を探してください、となります。

まあ、本人の能力次第ですが。

例えば、会社が都心にある場合、

高い住居費を払って会社の近くに住み、通勤時間と交通費を節約する従業員と、

住居費を節約する為、もしくはより良いプライベートの住環境の為に、郊外に住居を構えて通勤に時間と交通費を費やす従業員。

この二つは従業員本人のライフスタイルの違いであり、会社には関係ない事なんですね。

だから、通勤交通費の方だけを、手当という形で支給なんていう発想はないのでしょう。

ちなみに我が家の場合、セントラルロンドンまでの定期代は月163ポンド(約2万2千円)。
年間定期だと1,696ポンド(約23万円)。これでも、少ない方かもしれません。

夫婦二人分だと年間3,392ポンド(約46万円)になりますので、結構大きいのですが。

会社の同僚を見渡してみると、一人分の年間定期が2,000ポンド(約27万円)とか3,000ポンド(約41万円)なんてのはザラで、5,000ポンド(約68万円)以上なんて強者もチラホラ。

英国では、年収50,001ポンド(約678万円)以上の人の場合、それ以上増えた収入にかかる所得税率は40%(+2%)となります。

もし、5,000ポンド手取りを増やそうと思ったら、ざっくり、8,600ポンド(約117万円)ほどの昇給が必要です。

もし、こんな金額を「遠方に住んでるから」という理由で会社と給与交渉したら、すんなり聞き入れてもらえるものでしょうか?

多分、無理ですよね。

でも、日本では、どうなんでしょう?

募集するときは、給与額と、交通費の上限を分けて提示していますね。

同じ仕事をしていて同じ給与額でも、家が近い人なら交通費はゼロですむかもしれないし、家が通り人だと、一カ月に5万円とかかかるかもしれない。

おまけに、通勤交通費は、個人所得税は非課税ですが、社会保険料の標準報酬月額算定には含まれます。

そして、社会保険料は、労使折半。

つまり、通勤交通費が高い人っていうのは、会社にとって、「交通費の支給」プラス「社会保険料の増加」という、ダブルパンチです。

となると、同じ給与で募集しても、会社としては、採用してみるまで、その人にかかる費用の総合計は分からないのですね。

となると、遠方に住んでる人は、採用の際に、不利になるではないかと思うのです。

だって、同じ給与で同じ仕事をしてくれるなら、交通費がゼロですむ人のほうが、一カ月に5万円とかかかる人よりも、よいですよね。

日本の、「交通費支給」っていう制度は、一見、遠方に住む人を救済する制度のように見えますが、結局のところ、遠くに住む人が不利になる制度だと思うのです。

交通費自腹が普通の世界で長く働いていると、「交通費支給」っていうのは理不尽に思えてならないのです。


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