Saturday 23 November 2019

麻薬は「自己責任」というスタンスのヨーロッパ。

ヨーロッパでは、基本的に人権擁護、弱者救済の考え方が浸透しています。

なにかと言えば、すぐに「自己責任」ですませてしまう日本とは異なり、たとえ、自分の責任で弱者となってしまったとしても、弱者は弱者なんだから、救済しようというスタンスです。

例えば、先日英国に密入国しようとして、39人のベトナム人が冷凍コンテナの中で亡くなってしまったという痛ましい事件がありました。

英国に密入国しようとして凍死してしまったベトナム人女性の話がやるせない。https://floatingonwatermeditate.blogspot.com/2019/11/blog-post_52.html

日本では、亡くなってしまったのはかわいそうだけど、もともと密入国しようとした本人が悪い。危険を承知で密入国を図った本人の「自己責任」である。という感想を持たれる方が多いのではないでしょうか?

でも、英国では、理論が逆方向に進みます。

密入国しようとした事は悪い事だけど、それで命を落とすのはかわいそう。どこに生まれた人間でも、尊い命は尊い命。それがこんな風に失われた事は遺憾である。
罰させるべきは、密入国でお金を儲けているブローカーであって、亡くなった方たちは犠牲者である。

もし上手く密入国できた場合は、密入国者は犯罪者になるんですけどね。

まあ、理想主義って言えば理想主義で、そんな理想主義を振りかざしたメルケル女史が、難民受け入れ宣言しちゃって、ヨーロッパに難民が押し寄せて、それにEU諸国がキレかかってているという現実もありますが。難民問題は、英国をブレグジット(EU離脱)の国民投票に向かわせた理由の一つでもあります。まあ、ブレグジットの原因はそれだけではありませんが。

まあ、そんな感じで、弱者に優しく、あまり「自己責任」という考え方には遭遇しないヨーロッパなのですが、例外もあります。

それは、麻薬に対する考え方。

麻薬使用に対する、ヨーロッパの考え方は、「自己責任」なのです。

もちろん、ヨーロッパでも、日本ほど厳しくはないとしても、麻薬は違法です。

でも、麻薬を使用した人間に対する社会的制裁が、日本とヨーロッパではかなり異なります。

ヨーロッパでは、芸能人が麻薬で捕まってもそんなにイメージダウンにはならないし、それが理由で仕事を干されたりもしない。

クライアントが求める結果を出せる限り、「麻薬を使用している」事自体は、あまり関係ないようです。

ただ、麻薬を使用すると、仕事に穴をあける事が増えたりするので、もちろんそんな事になったらクビになります。そしてそれは、「自己責任」。

なので欧米では、成功している人の麻薬の使用は、そんなに珍しいことではないし、よって、オーバードーズ(薬物の過剰摂取)で亡くなる芸能人が後をたたないのです。

オーバードーズで亡くなった芸能人に対する周囲の反応は、おおむねこんな感じでしょうか。

  • やっぱりこの人、麻薬やってたのか。
  • 偉大な才能が失われたのは残念だけど、麻薬にオーバードーズは付物だから、まあ仕方がないね(自己責任)。

かわいそうだけど、麻薬を使用することによって人生がメチャクチャになるっていう事はわかりきっていることなんだから、それを分かっていて使用していたのは「自己責任」なのです。

ところで、ワタシが住んでいる英国は福祉国家ですが、それでもホームレスが存在します。

行政が貧乏人に冷たい日本に較べて、福祉が手厚い英国では、本気でホームレスを辞めたいと思ったら、シェルターに行って生活保護を申請すればよいのですが(不法移民でない限り)、それでもホームレスが存在します。

シェルターに行けば、少なくとも屋根の下で寝起きできるし、食べ物も支給されるのですが、飲酒やドラッグが禁止されているので、路上生活に戻ってきてしまうんですよね。

もちろん、英国にいるホームレスのすべてがアル中や麻薬中毒者であるわけではありません。

団体生活に向かない人や、なにか特別な思想をもっている人、また、不法移民はシェルターに行ったらヤブヘビになってしまうので、ホームレスを続けるでしょう。

でも、かなりジャンキーで危なげなホームレスも見かけるんです。

そんな、そんなホームレスに、優しい人がお金や食べ物を与えているシーンもチラホラと見かけます。

でも、その場しのぎのお金や食べ物では、その人の状況は改善されません。

本当の優しさは、そんな人達をシェルターに引っ張っていって、麻薬をやめさせることだと思うんですが、ヨーロッパ人は、なぜか、その辺りは「自己責任」で済ませてしまっているような気がするのです。

放っておいたら、まともな生活に戻れないばかりか、オーバードーズで死ぬかもしれないけど、「大人なんだから、自分でやって良い事と悪い事は分かるだろう。」という感じ。

もし、子供がそんな状態になってたら、「自己責任」なんて言って放っておくことはないと思うのですが。

そんなヨーロッパに較べて、日本は社会は、麻薬使用者に対しては、「自己責任」だと放っておくことはないですよね。

特に芸能人が麻薬使用で逮捕されたら、社会的制裁がすごいです。

仕事は直ちにすべて降板。服役後も芸能界復帰なんて許さない。

それだけバツを受けたら、将来、なんとか麻薬から立ち直って地道に人生を再出発できるかもしれません。

ところで、「芸能界復帰がダメ」な理由は、そんなことが許されたら、一般人の麻薬への意識が甘くなってしまう恐れがあるから。

一般の人へ、悪い見本を示してしまうからです。

つまり日本社会では、大人なんだから、麻薬を使用するかしないかの判断は「自己責任」だという感覚ではないのですね。

だから、「見せしめ」のために、有名人が麻薬使用で捕まると、厳しい社会的制裁が加えられるのです。

ヨーロッパでは、仕事に穴を開けてクビになったり、廃人になったり、オーバードーズで死ぬことが、ある意味「見せしめ」です、

それに較べると、日本社会はそこまで残酷ではない。

いや、むしろ優しい。

どちらが良いとも悪いとも言えませんが、麻薬に関しては、日本とヨーロッパで「自己責任」に対する考え方がガラッと逆転してしまうのは、興味深い現象です。

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